恋に落ちるなら君がいい
ピンポーン。
慧が指定した待ち合わせの場所は
2人で過ごしたあのアパートだった。
アパートの二階の古びた扉を前にして
私は恐怖と緊張と張り詰めた鼓動で手に汗を滲ませる。
あの夜
この階段から落ちて…
無意識にお腹に手をあてた時。
カチャリと、静かに扉が開いて
私服姿の慧が姿を現した。
「本当に来てくれた…」
「来るよ…約束したじゃない。」
答えた瞬間
キツく
抱きしめられて
いつか
実家を捨てて出てきた日の事が
まぶたの裏に鮮明に蘇る。
「ここの部屋…どうしたの?」
「澪といつか会える日が来るかもしれないって思って…
借りてた。」
「いつから…?」
「澪と離れ離れになって1年が経った頃だと思う。」
そう言いながら私を抱きしめる腕に力が入るのが伝わってくる。