恋に落ちるなら君がいい
「砂月…落ち着けよ?」
なだめる様な慧一の声も
耳をそのまますり抜けた。
運だけで成功しただけの弱小企業の社長のくせに…。
私に喧嘩を売るとどうなるかも知らないみたい…。
「…嫌だわ私、動揺なんかしてませんよ?
ただ、こんなすぐに離婚だなんて澪さんが心配なだけです。
だって貴方がたは社内恋愛のようですし。
離婚した後の彼女の会社での居場所とか…。」
すぐに笑顔を取り繕うと
あの男はスーツの内ポケットから
紙切れを取り出し、それを自分の前にかざす。
「澪の会社での立場を心配して下さって有難うございます。
でもご心配には及びません。
別れても彼女は
大切な女性。
彼女の立場を悪くするような事にはなりません。
それよりもご自分の心配をなさっては?」
余裕のある笑顔。
その紙切れに
何を隠しているの…?