お猫様が救世主だった件につきまして
「アレク殿下、いい加減になさいませ。淑女に対して何という言葉をお使いになりますか」
さすがにこれ以上はと考えたのか、アンナさんが眉をひそめて男をたしなめてくれる。彼女には弱いのか、アレクと呼ばれたやつはため息を着いて口をつぐんだ。
……って、デンカ?
デンカって何だ? 電化製品のこと? コイツ、ロボットなの?
「これはこれは、皆様お揃いのようで」
また違う声が部屋の中に木霊する。現れたのは白地のワンピースに赤いポンチョみたいなものを羽織った、60代くらいのおじいちゃん。銀髪と鼻の下にあるお髭がステキです。
穏やかな微笑みを浮かべたおじいちゃんは、ゆったりとしたペースでこちらへと歩み寄った。
「失礼いたしました、勇者様。わたくしは司祭長のヒースと申します。どうぞ気を楽になさってください」
どうやらやっとまともに話ができそうだ。あたしは既に訊きたくて仕方なかったけど。それに先んじてヒース司祭長が口を開いた。
「突然、このような場所に現れさぞかし驚かれたことでしょう。アンナからお話はお聞きになりましたか?」
「はい。あの……ここが日本とは違う世界のアクスティア王国で、ステルス帝国に領土を奪われ……あたしがそれを救うと」
「よろしい、それだけ理解なさっておられるならば問題はありませんね」
ヒース司祭長はゆっくりと頷き、あたしをジッと見据えてきた。