御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
どれくらい、どこをどう彷徨ったのか分からない。

我に返った時には、公園のベンチに腰かけていた。


寒いな……。


パーティに出席していた姿のまま、預けた上着さえそのまま出てきてしまったことに今になって気づく。

肩があらわになったドレス姿では、十一月の夜にはさすがに寒い。

その上、靴も履いていない。裸足でふらふらと歩いてきたせいで、気づかないうちに、あちこちに傷ができている。

人間って、本当に打撃を受けた時には、痛みも感じないんだ……。

父の会社がダメになった時だって、ここまで我を忘れたことはなかった。それほど、さっきのレイチェルの言葉は衝撃的だった。

怜人さまが、父の会社を買収しようとしていたなんて……。

それに、『私を手元に置いた方が都合がいい』ということは、私のことを以前から知っていたということになる。

そう言えば、初めてオフィスで会ったとき、怜人さまは私がメール室の求人に応募していることを知っていた。

彼は『CEOなら知っていて当たり前』と言っていたけれど、アルバイトの面接時間までCEOが知っているなんて、今思えはやっぱり不自然な話だ。


色々なことを総合すれば、やっぱりレイチェルの言っていることが嘘だとは思えない。

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