御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「それじゃ、最初に会ったときから、私のことも知っていたんですか!?」
「一応、顔と名前だけは。でも屋上にあなたが飛び込んできたのは全くの偶然ですよ。僕だって一緒に死にかけたんですから」
あの時のことを思いだし頬を赤らめる私を、怜人さまは優しく微笑みながら見つめている。
「けれどあの日も葉山社長には会えなかった。代わりに岡部氏に辛辣な言葉を投げつけられました。金に群がるハイナエ……。でも本当のハイエナは彼のほうだった。あの時、引き下がらずにもっと強い交渉をするべきでした。そうすれば、お父さんの会社は倒産せずに済んだかもしれない」
怜人さまが苦しげに言葉を吐き出す。
私の知らないところで起こっていた出来事に驚くことしかできないけれど、やはりその渦中で暗躍していたのは康弘さんだったことを、今更のように実感する。
「そのあとはあなたも知る通りです。卑怯な手段を使って利権を奪い、光本製薬も彼もは莫大な利益を得るはずでした。僕もこの件からは完全に手を引いて、あなたたちと関わることはなかった。でも、三か月前、妙な噂を耳にして」
「噂……ですか」