御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「ええ。光本製薬で始まっているはずの新薬のプロジェクトが中断していると。研究内容に関する大きな問題が発覚し、総責任者である岡部氏に批判が集まっている」
研究内容に関する大きな問題……。
父と康弘さんがあれほどに心血をそそいだ研究に、なにか不備があったというのだろうか。
「それで今、新薬のプロジェクトはどうなっているんですか」
「完全に中断しています。世界中が注目していた研究だけに、光本製薬だけでなく、日本の研究活動に対する批判も、起こる可能性があります」
「そんな……」
確かに私たちは、会社を失って大変な思いをした。
けれども、心のどこかに救いがあったのは、どんな形であれ父が開発した研究で、今まで助からなかった命が助かるのだという希望があったからだ。
今病床時いる父が、きっと一番そう思っているに違いない。それなのに、その希望すらが打ち消されようとしている……。
「僕は、葉山社長、あなたのお父様に会おうとしました。だけど、どうやっても見つからない。それでまずはあなたを探そうと思った。あなたが卒業した大学を調べ、あなたが教わった教授にインタビューを申し込んだ。幸い英文科でしたからね。それに、我が社が記念館を運営している英国の大作家、『ロイス・キャメル』の研究では、世界的に有名な研究者だ。それであなたの名前を出してみた。『パーティで偶然会って一目ぼれをした。だからまた会いたいんだ』ってね」