御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


「理咲、今日の夜の予定ですが、僕は外出先から直接向かうことになりそうです」

「分かりました。先に行ってまってますね。お忙しいのに、本当にもうしわけありません」

「いいえ。僕も彼とは一度会ってゆっくり話をしたいと思っていましたから、ちょうどよかった」

そう言って、怜人さまはこの上もなく優しく笑った。





仕事を終え、私は都内でも有名な、中華のレストランに向かった。

いかにも高級そうな店に入って名前を告げると、案内の女性に連れられて個室に入る。

そこにはいつもより緊張した面持ちの陸がすで座っていた。


「西条さんは?」

「外出先から直接くるって」


陸と会うのは約二か月ぶり。

先日、陸の口座に学費を振り込んだあと陸から連絡が入り、いったいいつまで友達の家にいるのか、ふらふらしないで自分の部屋に早く来い、と散々言われてしまった。

いくら問いただされてもはっきり答えを言わない私に業を煮やし、今からそこへ行くとまで言われ……。

そこで、とうとう怜人さまとのことを白状するに至ってしまった。

それからの陸の激怒ぶりは……言葉では言い表せないほどだ。

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