御曹司は身代わり秘書を溺愛しています


『そいつと会って話をする』と言って聞かない陸に困り果て、つい怜人さまにこぼしてしまったところ、『僕も彼に話がある』と言いだし……食事会が開かれたという訳だ。

通された個室は高級中華料理店特有の豪華な円卓の部屋。


しかし陸は、「こんなところに呼び出したって、俺は丸め込まれたりしない」とすでに臨戦態勢だ。


「普通に考えてもおかしいだろ。『Teddy 's Company』って、ホテルやデパートだけじゃなくて、資源開発とかに投資もしてる世界的な大企業だろ。そんなところの御曹司が、日本人の、しかも倒産した中小企業の娘を真剣に相手にするわけないだろ。姉ちゃん遊ばれてるんだ。いわゆる現地妻ってやつじゃないのか」

「怜人さまはそんな人じゃないよ」


すぐさまそう反論する私に陸は、


「そういうすぐに相手を信じるところがダメだっていってるんだろ。ちょっとは学習しろよ」


と吐き捨てるように言い、イライラしながら運ばれてきたジャスミンティーに口をつける。


「あっつ……くそ、やけどした」


「もう……。大丈夫?今、氷の入ったお水もらうから」

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