御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
少しバツの悪い顔をした怜人さまは、「ついでにあなたとお付き合いすることを許してもらうつもりだから、あなたもそのつもりで」とさらりと言い放つ。
「えっ!?えっと……そうなんですか!?」
怜人さまの予想外の発言に、ドキドキと心臓がうるさく脈打った。
どうしよう。心の準備ができていなかった。
今まで彼氏を紹介したことなんて無かったけど、いきなり「もう一緒に住んでます」って報告をしなくちゃいけないのか。
あっ……。一緒に住んでても、まだ……だけど。
途端に頭の中によぎる様々な思いに、頬がカッと赤くなる。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、赤信号で停まった隙に、怜人さまは今日何度目かのキスをした。
シーズンオフの展望台の駐車場には、一台の車も停まっていない。その真ん中に二台並べて車を停め、私たちは外に出た。
十二月に入ったばかりとはいえ、海から吹き付ける風は冬そのものだ。怜人さまに言われて、コートを着込んできて正解だった。
吹き抜ける風の冷たさに無意識に手をこすり合わせていると、怜人さまが大きな手で私の手を包み込む。
「あなたの手袋を買わないといけないね」
私の手をつないだまま、ふたりの手をコートのポケットに入れて、彼の目が優しく微笑む。
「……必要ないか。無ければ、いつでもこうして手をつないでいられる」
ポケットの中でつながれた手は、冬の寒さを融かして心まで暖かくしてくれる。