御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「君には何度もヒントを与えたじゃないか。まだ分からんのか。それじゃ、やっぱり君と理咲を一緒にしようとしたのは、間違いだったんだな」
首元にナイフを突きつけられたまま、父が力なく三角巾を頭からとる。
「動かないで!早く答えてください。でなければ……なにをするか分かりませんよ?」
「いいよ。君に殺されるなら本望だ。どうせ僕はもう、死んだも同然だよ」
父の穏やかな眼差しが宙をさまよう。そして肩を落とすと、背後にいる康弘さんに語りかけた。
「あの研究が成功したのは、本当に君のおかげだ。確かに論理を生み出したのは僕だが、君の献身的なサポートであの研究は完成した。だから本当は、君の望み通りすべて君にあげたってよかった。だけど、光本製薬だけはダメなんだよ。あの会社は自分たちに利益しか考えていない。本当に必要な人たちに恩恵を与えるつもりなんて無いんだよ」
「だけど僕には、あの会社でなければダメだったんです」
その言葉に、半年前垣間見た光本製薬の令嬢との光景が目に浮かんだ。
思えばあの時には、もうすべてのことが動き出していたのだ。