御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
あれから、どこをどう彷徨っていたのか分からない。

歩き疲れてショッピングセンターのベンチにぼんやり座り、何気なくジャケットのポケットに入れてあったスマホをタップすると、怜人さまからの着信が何十件も並んでいる。

時刻を確認すると、あれからずいぶん時間が過ぎていることに気づいて、ようやく正気に戻った。


可憐さんはどうなっただろう。それに、怜人さまの立場は守れたのだろうか。

今まであまりにもそばにいすぎて、怜人さまの立場を深く考えていなかったけれど、よくよく考えれば彼の背負う重責は計り知れない。

世界的な有名企業の後継ぎと英国貴族の御曹司という立場は、きっとちょっとしたスキャンダルでさえ命取りになるはずだ。

そんな彼に私のようなものが釣り合うはずもないことを、今更のように思い知らされる。


今朝まで彼の腕に抱かれていた自分を思い、身を切られるような思いでスマホを握りしめていると、不意にメールの着信を知らせる振動が手に伝わった。


可憐さんだ。慌てて確認する。

< 192 / 242 >

この作品をシェア

pagetop