御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
とても近い距離で見つめあう。


切なげに伏せたまつ毛すら愛しくて、彼の頬を手で包み、口づけた。


「理咲……」


優しく触れた私の唇は、体を入れ替えられて組み敷かれ、彼に激しく奪われる。

頬に、額に、まつ毛に、そして耳元から首筋を熱い怜人の唇がたどり、ひとつひとつボタンを外されたパジャマが開かれて、素肌に彼の印が刻まれていく。


「唇もまぶたも指先も、髪の先まであなたのすべてを……僕だけのものに……」


いつの間にか身に着けていたものがすべて取り払われ、一糸まとわぬ姿で彼の前にさらされる。

彼もまた同じ姿で、熱い肌が私のそれに触れ、絡み合う。

怜人の熱が私をさらい、優しさだけでは済まされない彼の想いが一気に流れ込んで……息ができない。



荒い息をはく唇を塞ぎながら、怜人の体が私の中に沈んだ。

溺れる人のように、彼の首にギュッと手をまわしてしがみつく。

離れたくない。彼とこうして、ずっと溶け合っていたい。


「このままずっと、時が止まってしまえばいい」



そう彼がつぶやいた刹那、このまま死んでしまってもいいと、本気で思った。









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