御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
ロンドンの高級なアパートメントで一人ぼっちで眠る夜は、本当はすごく寂しかった。
冷たいシーツが悲しくて、無意識に怜人の香りを探した。そんな思いが、私の手を彼に絡み付かせる。
「言われなくても、たくさん愛してあげます。あなたが嫌だといってもやめないから、そのつもりで」
「怜人の好きなようにして……」
言葉の続きを遮るように、熱い唇が私の吐息を飲み込んだ。
もどかしいように体を伝う唇と指が、彼と私との狭間をどんどん薄く湿らせていく。
余計なものが取り払われ、与えられる柔らかなキスと想いが、私の中を満たしていく。
心も体も、そして頭の中までもが怜人でいっぱいになり、他には何も考えられなくなった。
ベッドに深く沈む私の体も、彼の切なげな吐息も、すべてが溶け合って混ざり合い、真新しいシーツに染み込んでいく。
熱に浮かされて吐き出そうとした息さえ閉じ込められて、怜人の背中に爪を立てた。
愛する人に身も心も愛される歓びが、私をゆるゆるとほどいていく。
怜人に与えられる歓びはあまりにも深くて……。
波にさらわれて、二度と戻れないほどの高みに連れて行かれる。
怖くて、無意識に抗った。
「あっ……やっ……」
「理咲、逃げないで。僕を信じて」
組み敷かれた体の上で、怜人が甘くささやく。
出会った時から心を捉えて離さない、海の色をした瞳が私だけを見つめている。
「もっと深く、あなたを知りたい」
そう耳元でささやく甘い彼の中に、私は跡形もなく溶けていった。
緑と花々に彩られた光の中で、私が幸せなジューンブライドになったのは、それから半年後のこと。
それからは……。
青い目の王子様と……小さな愛しい人たちとの幸せな暮らしが、永遠に続いていった。
《終わり》
