御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「……理咲?」
まっすぐ向けられた、戸惑うような視線に我に返る。
「な、なんでもありません……。ありがとうございます……」
意味ありげな微笑みを向けて、怜人さまは視線を前に向ける。
私ったら……ふたりで車に乗るくらいで、なんでこんなに緊張しちゃってるの?
鳴り止まない動悸をなだめるように胸に手を当てても、はやる鼓動はまったく収まらない。
そんな私の動揺をよそに、運転席の横顔は揺らぐことなく前を見つめている。
薄いブルーのワイシャツと、同系色のネクタイ、ネイビーのスーツ。
服装はごくシンプルなのに、それが返って自分の端麗さを際立たせていることに、怜人さまは気づいているだろうか。
そして……いつもの匂い。
初めて会った時から私を酔わせている、怜人さまの香水の香り。