御曹司は身代わり秘書を溺愛しています
「離して!!」
悲鳴を上げるように叫んだ。
胸が、心がつぶれてしまう。
もしも炎が怜人さまを焼いてしまったら……。そんな考えが脳裏をよぎるだけで、気が狂いそうになった。
それがどれほどの時間だったのかは分からない。
全身から血の気が引いてふらついた私の体を、いつの間にか息を荒らげた人の力強い手が支えてくれる。
「理咲、大丈夫?」
目の前には怜人さまがいた。頭で考えるより先に、首に手をまわして強く抱きついていた。
「嫌です……っ」
「理咲……!?」
とっさに体をかがめて抱擁を受け入れると、怜人さまは私を落ち着かせるように、耳元で優しく言った。
「テーブルの上にあったから、慌てて取ってきました。理咲の部屋にはまだそんなに火は回っていなかったから、理咲の大切なものは無事でした。僕も、ほらこのとおり、どこにも怪我はありません」
「私は……怜人さまが無事でいることの方が……」
ぎゅっと首に抱きついたまま、胸の苦しさを吐き出す私を、怜人さまはただだまって受け止めてくれる。
「こんなのはもう絶対に嫌です。怜人さまに何かあったら、私も一緒に死にます」
「……この状況でそれって、すごい告白ですね」
「ふざけないでください……っ」
「ふざけてませんよ。真剣に嬉しいです」
怜人さまの手が私の体を抱く。その力強さに、緊張していた体から力が抜ける。
そのまま地面に膝をついて、私はしばらく怜人さまから離れることができずにいた。