デジタルな君にアナログな刻を
「暇じゃないでしょ?明日は一日かけて、クリスマスの飾り付けをする予定だよ。自分から提案しておいて、忘れてるとか酷いなあ。言ったことにはちゃんと責任取らなきゃ」

「はい?」

飾り付けの件は確かに言ったけど、明日は定休日ですよね?

まん丸く目を見開くわたしに対し店長の目は細ーくなるけれど、いつものように弧は描かず冷ややかだ。もしかして機嫌悪い?怒られてる?

「そうだったんですか?やだ、早く言って。じゃあ、また今度ね」

不穏な空気を敏感に感じ取ったのか、奈々美さんは逃げるように帰ってしまう。あ、お肉が……。食べられなくなったと思うとおかしなもので、惜しくなる。

「……明日はお店を開けるんですか?」

やっと年末商戦に参戦する気になったのかな。それならそれで仕方がない。喜んで休日返上しましょう。売り上げが期待できるかは、また別の問題。

「いや、普通に休むよ。飾り付けをしながら営業なんてできないし」

そこに気を配れるんだったら、お茶の時間も遠慮しようよ。
引っかかりを覚えながら手にした空き箱が、ひょいと持ち上がる。

「ということで、明日の11時頃に迎えに行くから」

「誰を、どこに?」

「円ちゃんちに円ちゃんを。飾り付けのグッズを買いに行こう」

すたすたと箱を片付けに裏へ行こうとしたベストの背中を追いかけ、後ろに付いているベルト部分を掴んだ。店長が首だけで振り返る。

「なんでですか?」

「なんでって言われても。飾りになるようなものが何もないから、かな」

首を傾げて真面目に答えた店長から手を離した。それもそうか。殺風景な店内を見回して納得する。

「どんな感じにしたいか、明日までにテキトーに考えておいて」

いい加減な業務命令を受けたわたしは、さっそくメジャー片手に、あちこちの採寸を始めたのだった。

< 34 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop