デジタルな君にアナログな刻を
赤、緑、ゴールド。様々な色が洪水のように目に飛び込んでチカチカする。LEDの電飾や踊るサンタ、貼って剥がせるステッカーなど、目移りしそうなほどの種類が並ぶ。

「予算はどのくらい?」

音に反応する雪だるまに話しかけていた店長に訊ねた。

「え?テキトーでいいよ。円ちゃんが必要なだけ。これも買う?」

彼の声で、嬉しそうに七色に身体を光らせ腰を振る三段重ねの雪だるま。もしかして、スノーマンじゃなくて雪女?

「いえ、要りません」

わたしに一刀両断され、しゅんと萎んだ店長を放置したまま商品の物色を始める。いくら予算は「適当」と言われても、その通りにはできない。携帯のメモと照らし合わせながら、ひとつひとつ吟味してカゴに入れていった。

それでもそこそこの量と金額になってしまった荷物を載せたカートが、店の一角にある時計売り場の前を通る。つい目がいってしまうのは、やっぱり職業病といえるだろう。
それほど大きなスペースではないのに、数百円で買える目覚まし時計から0の数を確かめしまった超有名ブランドの高級腕時計など、バラエティーはウチの店よりずっと豊富……あれ?

「ただいまのお待ち時間、15分、だそうですよ?」

専用カウンターの上に掲げてあった、腕時計の電池交換の案内を読んで店長に視線を向けると、わざとらしく顔を逸らされた。こういった場所での交換は、指導を受けた店員さんが行っている場合が多い。店長はたとえ3級とはいえ時計修理技能士の有資格者だ。

けれども。我が薗部時計店では、一般的なものでも30分はお時間を頂いております。なんなら、お預かりしますので後ほど取りにいらしてください、というスタンスですが。

「ほら。ウチの場合は、交換だけじゃなくて、簡単なクリーニングをしたりもしているから」

それってベルトを拭いたり、ガラスやケースを磨く程度ですよね。それにしてもずいぶん時間をかけている。

「2級とか1級とか、上の資格を取る予定はないんですか?」

そうすれば、請け負える仕事も格段に増えるはず。専門学校で学んだり何年も修行したりと、難しい資格なのは少し調べてみたからなんとなくわかるけど、彼にはお店を発展させる気はないのだろうか。

「あー。筆記はまだどうにかなりそうでも、実技が、ね」

苦笑いで言葉を濁す。そう言われてしまえば、生まれ持った手先の器用さやセンスは、努力だけでは補いきれない点があるのもわかる。店長の場合は、実技試験に時間制限がある時点でまずアウトかもしれない。

「買い物も終わったし、どこかでお昼を食べて店に戻ろう」

あからさまに話題を変えて、すたすたと歩き出してしまった。
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