デジタルな君にアナログな刻を
「片付けも済んだので、そろそろ帰ります」
「え?じゃあ、車で送るからちょっと待ってて」
店を出て行こうとする店長を引き留める。
「いえ、バスで帰ります。……弟に頼まれていた乾電池を買い忘れたので」
買い物の最後に別会計で買おうとしてすっかり忘れるなんて、どれだけ浮かれてたんだ。
コンビニに売っているかな。あっても高そう。
「電池?店にあるのでよければあげるよ。持っていって。種類なに?」
消していた照明を点け、引き出しの中をあさり始めてしまう。
「本当に大丈夫です。お店の経費で買った物を私用に使うなんてダメです。それにお昼のお金も払わないと。いくらですか?」
バッグからお財布を取り出そうとしたわたしの手を、今度は珍しく真面目な顔の店長が止める。
「今日の休日出勤の分だって考えないといけないのに、そんなのそれこそ要らない。代休と手当、どっちがいいか決めておいて」
普段いい加減なくせに、どうしてそんなことには気が回るの?唐突に『経営者』らしい一面をみせた店長は、知らない人のよう。
彼と一緒にいた今日一日が、貴重な休みを返上して出た仕事だと、わたしはこれっぽっちも感じている暇なんてなかったというのに。
「お金!休みよりもお金にしてください。もちろんそこから、昼食代を差し引いてくださって結構です。何でしたら、家まで迎えに来てもらったガソリン代も。あ、たぶんあのバスが、団地行きになるはずなんで。お疲れ様でした。お先に失礼しますっ!!」
ロータリーを回って駅に到着したバスのヘッドライトが見えたのを口実に、コートに袖を通すのももどかしく店から飛び出した。
去り際に「円ちゃんはホントに仕事熱心だな」という呆れた声と嘆息が聞こえたけれど、無視してドアを閉める。
ビルの表へ回った時にチラリと見えたショーウィンドウの中は、雪国の静かな冬の夜のようだった。
慌ててバスに乗ったけれど発車まではまだ8分もあって。持て余した時間、ロータリー広場にあるなかなか進まない時計と煌びやかなツリーを、最後尾に座りぼんやりと眺めて過ごしたわたしは、もちろん乾電池を買って帰ることはなかった。
「え?じゃあ、車で送るからちょっと待ってて」
店を出て行こうとする店長を引き留める。
「いえ、バスで帰ります。……弟に頼まれていた乾電池を買い忘れたので」
買い物の最後に別会計で買おうとしてすっかり忘れるなんて、どれだけ浮かれてたんだ。
コンビニに売っているかな。あっても高そう。
「電池?店にあるのでよければあげるよ。持っていって。種類なに?」
消していた照明を点け、引き出しの中をあさり始めてしまう。
「本当に大丈夫です。お店の経費で買った物を私用に使うなんてダメです。それにお昼のお金も払わないと。いくらですか?」
バッグからお財布を取り出そうとしたわたしの手を、今度は珍しく真面目な顔の店長が止める。
「今日の休日出勤の分だって考えないといけないのに、そんなのそれこそ要らない。代休と手当、どっちがいいか決めておいて」
普段いい加減なくせに、どうしてそんなことには気が回るの?唐突に『経営者』らしい一面をみせた店長は、知らない人のよう。
彼と一緒にいた今日一日が、貴重な休みを返上して出た仕事だと、わたしはこれっぽっちも感じている暇なんてなかったというのに。
「お金!休みよりもお金にしてください。もちろんそこから、昼食代を差し引いてくださって結構です。何でしたら、家まで迎えに来てもらったガソリン代も。あ、たぶんあのバスが、団地行きになるはずなんで。お疲れ様でした。お先に失礼しますっ!!」
ロータリーを回って駅に到着したバスのヘッドライトが見えたのを口実に、コートに袖を通すのももどかしく店から飛び出した。
去り際に「円ちゃんはホントに仕事熱心だな」という呆れた声と嘆息が聞こえたけれど、無視してドアを閉める。
ビルの表へ回った時にチラリと見えたショーウィンドウの中は、雪国の静かな冬の夜のようだった。
慌ててバスに乗ったけれど発車まではまだ8分もあって。持て余した時間、ロータリー広場にあるなかなか進まない時計と煌びやかなツリーを、最後尾に座りぼんやりと眺めて過ごしたわたしは、もちろん乾電池を買って帰ることはなかった。