デジタルな君にアナログな刻を
身軽になったわたしは竹箒を抱え慌てて後に続く。もしかしてついて行っても仕方がない?とも思うけど、「じゃあよろしく~」とは言えません。

ビルの裏手にあるゴミ置き場。回収はすでに終わっていて、本来ならゴミを捨ててはいけない時間だけど、これは共用部分の物だから大丈夫なはず。立河さんは端っこの方に大きなゴミ袋を置いた。

「ずいぶん集まったんだね。これだけあれば、焼き芋ができそうだな」

ビジネスバッグを小脇に挟んで、手についた埃を叩いて払う。すっきり短く刈り上げた黒髪と知的な銀縁の眼鏡はともすればお堅い印象を与えがちになるけれど、立河さんの場合は頼り甲斐と誠実さが前面に押し出され、絶対仕事にもプラスに働いていると思う。どこかの誰かにも見習ってもらいたいものだ。

「いいですね、焼き芋。大好きです」

ええ好きですとも。芋、栗、南瓜は三種の神器です。ほっくり割った安納芋の黄金色の断面を想像して、うっとりと唾を飲み込む。
ぷっという、抑えられた笑い声で我に返った。

「あ、ありがとうございました。助かりました」

自分のことながら、食い意地の汚さが恥ずかしい。熱くなった顔をごまかすために深々と頭を下げたとき、ちらりと目に入った彼の手首で光る時計はとても高そうだ。

どこのブランドの物だろう? まだわたしには一見で判別できるだけの知識はない。ロゴを確かめようとして先に時刻が目につく。

うわっ! もう30分も外にいる。そう自覚したら、急に忘れていた寒さがぶり返す。

これから市役所と銀行に行くという立河さんと別れて、冷たくなった手に息を吐きかけながら店に入った。


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