デジタルな君にアナログな刻を
「今度は違う孫娘なんだよ。前のを見て、自分も欲しいと騒ぎ出してね。ちょうどクリスマスだし買ってやる、と約束をさせられてしまったというわけさ」

苦笑いを浮かべているけれど、目尻は下がりっぱなしの好々爺。優しいおじいちゃんがいて、お孫さんたちは幸せだなあ。

「では、クリスマスプレゼント用に包装しますね。あ、でも……」

商品を手に取ってから、わたしは眉根を寄せてしまった。おやゆび姫の時計と値段は一緒なのだけれど、あれは長い間展示していたり箱が日焼けしていたので、店長が値引きをしている。だけどわたしの一存で、この時計まで安くすることはできない。そんなわたしの心中をも、尾崎様は察してくれた。

「お代のことかい?もちろん今度はちゃんと払うさ。この店を潰すわけにはいかないからね」

「すみません、ありがとうございます。乾電池は新しいものをセットしてしまってよろしいですか?」

「ああ、頼むよ」

引き出しから新品の電池を出して交換し、持って帰る途中で鳴らないよう演奏機能はオフにしておく。化粧箱へ慎重に詰めて、せめてラッピングは豪華にしようと張り切った。
子ども向けの包装紙を用意していなかったというミスをカバーするため、リボンは金銀二色を使って華やさをプラスする。大きさの違うの輪を幾重にも重ねて中心をホチキスで留めるリボンを作ってみたら、それなりに可愛くなった。

紙袋に入れてソファで待っていた尾崎様に渡す。

「大変お待たせいたしました。なにかお困りのことがありましたらご連絡ください」

「ありがとう。哲君にもよろしく」

店を出て行くまで見送り、「ありがとうございました」と深々と頭を下げる。尾崎様の姿が人混みに紛れ、見えなくなってからやっと肩の力が抜けた。何度やっても、ひとりきりの接客は緊張するものだ。

お孫さん、あの微妙なアリスを気に入ってくれるかな?
若干の不安を抱きつつ、凝った肩を回しながら何の気なしにロータリーへと目を向ける。すでに交通規制は始まっていて、即席のステージが姿を現していた。

あれ、店長がいない。

案内板を設置したり、業者の人たちに指示を出している赤いはっぴの人の中に、店長の長身は見当たらない。どこか他の場所で作業しているのだろうか。結局、お昼も帰って来なかったけど……。

見上げた電光掲示の時計塔の数字は15時52分を示していた。
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