デジタルな君にアナログな刻を
「あの声はトッキーだと思うんだけど。『営業じゃなかったら、亜紀リンと過ごせたのに~』っていうのも聞こえちゃったんだよね」
トッキーというのは、たぶんわたしが指差した最年少の子。登志樹でトッキー。でもって、亜紀リンって、あの亜紀リン!?
大声を上げそうになったわたしの口を、慌てて手を当て奈々美さんが押さえる。
「たぶん、お相手は円ちゃんの想像通り」
小声を更に潜めてとどめを刺す。
亜紀リンというのは、清純派を売りにしている女子アイドルグループのひとり。その中でも特に浮き世離れした発言の多い、不思議ちゃんキャラの子だ。へえ、そうなの。
あの「赤ちゃんはキャベツ畑に採りに行くんですぅ」とか「白馬に乗った王子様のお迎えを待ってるの~」などという痛々しい言動は、ビジネスだったのか。まあ、逆にアレが素だといわれる方が恐ろしいかも。
やっぱり芸能人も同じ人間なのだ。納得しているわたしの横で、淡い夢を打ち砕かれた奈々美さんは大きくため息をつく。
「まあね、芸能界なんてそんなもんだとは思ってたけどさあ。あ、この話はここだけにしておいてね。さすがに、若い子が大人の思惑で恋路を邪魔されるのはかわいそうだから」
年寄じみた口調が妙に板に付く奈々美さんの小さな口が、不意にへの字に曲がった。
「それに、浅見さん親子が知ったら大騒ぎになりそうだし」
「……浅見、さん?」
「知らない?カルチャースクールの講師をしている浅見さんと、高1のお嬢さん。トッキーの大ファンなのよ」
ちょ、ちょっと待って!整理する。浅見さんは子持ちということ?え、いくつ?店長と同じ年くらいだと思ってたんだけど。
「そんなに大きな娘さんがっ!?浅見さんって、結婚しているんですか?」
我が家みたいなシングルマザーの可能性もあるから、決めつけるのはよくないけれど、確認せずにはいられない。
「知らなかった?出版業界に勤めている旦那さんの伝手で、今回のライブが実現したらしいよ。ちなみに彼女、もうすぐ42歳」
アレでっ!?ウチの母親と2歳しか変わらないの??
いやそれより、既婚者なら店長とは何でもないってこと?だったらどうして……。
疑問符でいっぱいになったわたしの前を、不思議な物体が通り過ぎる。
「……なんですか、アレ」
ついつい首を巡らし目で追ってしまった。
トッキーというのは、たぶんわたしが指差した最年少の子。登志樹でトッキー。でもって、亜紀リンって、あの亜紀リン!?
大声を上げそうになったわたしの口を、慌てて手を当て奈々美さんが押さえる。
「たぶん、お相手は円ちゃんの想像通り」
小声を更に潜めてとどめを刺す。
亜紀リンというのは、清純派を売りにしている女子アイドルグループのひとり。その中でも特に浮き世離れした発言の多い、不思議ちゃんキャラの子だ。へえ、そうなの。
あの「赤ちゃんはキャベツ畑に採りに行くんですぅ」とか「白馬に乗った王子様のお迎えを待ってるの~」などという痛々しい言動は、ビジネスだったのか。まあ、逆にアレが素だといわれる方が恐ろしいかも。
やっぱり芸能人も同じ人間なのだ。納得しているわたしの横で、淡い夢を打ち砕かれた奈々美さんは大きくため息をつく。
「まあね、芸能界なんてそんなもんだとは思ってたけどさあ。あ、この話はここだけにしておいてね。さすがに、若い子が大人の思惑で恋路を邪魔されるのはかわいそうだから」
年寄じみた口調が妙に板に付く奈々美さんの小さな口が、不意にへの字に曲がった。
「それに、浅見さん親子が知ったら大騒ぎになりそうだし」
「……浅見、さん?」
「知らない?カルチャースクールの講師をしている浅見さんと、高1のお嬢さん。トッキーの大ファンなのよ」
ちょ、ちょっと待って!整理する。浅見さんは子持ちということ?え、いくつ?店長と同じ年くらいだと思ってたんだけど。
「そんなに大きな娘さんがっ!?浅見さんって、結婚しているんですか?」
我が家みたいなシングルマザーの可能性もあるから、決めつけるのはよくないけれど、確認せずにはいられない。
「知らなかった?出版業界に勤めている旦那さんの伝手で、今回のライブが実現したらしいよ。ちなみに彼女、もうすぐ42歳」
アレでっ!?ウチの母親と2歳しか変わらないの??
いやそれより、既婚者なら店長とは何でもないってこと?だったらどうして……。
疑問符でいっぱいになったわたしの前を、不思議な物体が通り過ぎる。
「……なんですか、アレ」
ついつい首を巡らし目で追ってしまった。