デジタルな君にアナログな刻を
大きな星形の頭の左上に彗星のような尻尾がついている。その大きさとあまりにもアンバランスな細身の身体が纏うのは、おとぎ話の王子様のような服だ。
白のフェイクファーで縁取りされた深紅のマントを翻し、蛇腹みたいな襟を付け、青と緑のストライプのかぼちゃパンツから、白タイツに包まれた長い足が伸びる。手に持つ王杓の先はなぜか電車の模型になっていた。
電車……。なにかが引っかかった記憶をたぐり寄せる。
「ひょっとして『こうそくクン』ですか?」
来年度から、ここの駅を始発とする快速列車が走る。都内に出る時間が大幅に短縮される予定で、通勤通学はもちろん、買い物やレジャーも格段に便利になるとの期待が高まっていた。
その開通に合わせ、市内からゆるキャラの名前とデザインを募集し、今夜がその公式デビューの場なのである。名前だけは先に市民の投票で決まっていたから、小耳に挟んではいたけれど。
あのインパクトが強すぎる姿は、一度見たらなかなか忘れられない。それはある意味成功と言えなくも、ないのか?
こうそくクンは、視界が狭いのかバランスの悪い頭が重すぎるのか、ふらつきながら歩き、実行委員の説明を受けている。
真冬とはいえ、きっと中の人はいろいろな理由で汗だくだろう。
「流れ星をイメージしたらしいんだけど。『高速』とか『光速』っていうより、あれじゃあ『鈍足クン』だよね。第一あの格好、スゴい羞恥プレイ」
ぎこちない動きのこうそくクンに冷ややかな眼差しを突き刺し、身も蓋もなく言う奈々美さんの声音には、微塵も憐憫が感じられない。この人、怖いです。
「商店街組合の人はこちらに集まってくださーい」
拡声器の声がかかり、赤い集団がぞろぞろと移動する。わたしたちはライブ時、ステージ前を警護する係を割り当てられた。式典が終わり次第、ロープを張った内側に等間隔で立つそうだ。
会長さん。間近っていっても、舞台に背を向けていては彼らを観られません。
ついに始まったイベントをステージ横で眺めながら、必死に寒さに耐えていた。
白のフェイクファーで縁取りされた深紅のマントを翻し、蛇腹みたいな襟を付け、青と緑のストライプのかぼちゃパンツから、白タイツに包まれた長い足が伸びる。手に持つ王杓の先はなぜか電車の模型になっていた。
電車……。なにかが引っかかった記憶をたぐり寄せる。
「ひょっとして『こうそくクン』ですか?」
来年度から、ここの駅を始発とする快速列車が走る。都内に出る時間が大幅に短縮される予定で、通勤通学はもちろん、買い物やレジャーも格段に便利になるとの期待が高まっていた。
その開通に合わせ、市内からゆるキャラの名前とデザインを募集し、今夜がその公式デビューの場なのである。名前だけは先に市民の投票で決まっていたから、小耳に挟んではいたけれど。
あのインパクトが強すぎる姿は、一度見たらなかなか忘れられない。それはある意味成功と言えなくも、ないのか?
こうそくクンは、視界が狭いのかバランスの悪い頭が重すぎるのか、ふらつきながら歩き、実行委員の説明を受けている。
真冬とはいえ、きっと中の人はいろいろな理由で汗だくだろう。
「流れ星をイメージしたらしいんだけど。『高速』とか『光速』っていうより、あれじゃあ『鈍足クン』だよね。第一あの格好、スゴい羞恥プレイ」
ぎこちない動きのこうそくクンに冷ややかな眼差しを突き刺し、身も蓋もなく言う奈々美さんの声音には、微塵も憐憫が感じられない。この人、怖いです。
「商店街組合の人はこちらに集まってくださーい」
拡声器の声がかかり、赤い集団がぞろぞろと移動する。わたしたちはライブ時、ステージ前を警護する係を割り当てられた。式典が終わり次第、ロープを張った内側に等間隔で立つそうだ。
会長さん。間近っていっても、舞台に背を向けていては彼らを観られません。
ついに始まったイベントをステージ横で眺めながら、必死に寒さに耐えていた。