デジタルな君にアナログな刻を
センターの左側に立ったこうそくクンの様子は、首を横に向けたわたしの視界に辛うじて入った。
歩くのもやっとな状態で、本当にダンスなんてできるのだろうか?子どものお遊戯会を見守る母親のような気持ちになって、密かにエールを送る。
前奏が鳴り始めると、会場のファンの人たちも曲に合わせて手の振りを始めた。どうやらこれは、会場も彼らと一体になれるファンには定番曲のようだ。こうそくクンも必死でついていこうと頑張っている。視線を少しずらすと、完璧な振りの浅見さん親子が確認できた。
あ、手が左右逆だ。そこは前じゃなくて後ろ。初めて見た私でもわかるミスを連発するこうそくクン。
危なっかしくて見ていられないんだけど、なぜだか一生懸命な姿から目を逸らすことができない。
今度は一拍遅れ始めた。それを取り戻そうと慌てて動かしが足がもつれて、転びそうになる。それをどうにか堪えて持ち上げた、大きな星形の頭についたつぶらな瞳とわたしの目が、一瞬だけ合ったように思えた。着ぐるみの目となんて、そんなことあるはずないのに……。
間奏は、ソロで踊る部分があるらしい。順番にひとりずつ中央に躍り出て、個性を活かしたダンスを披露していく。その間こうそくクンはしばしの休みを使って、必死に息を整えていた。両肩が尋常でないくらい大きく上下を繰り返す。
トッキーの番になり、わたしの前の一団がヒートアップした。ロープはぐいぐいと押されて、今にもロープを通したポールが倒れそう。こんなのじゃあ、支えきれない!
なんでもっとしっかりした物を用意してくれなかったのか。アイドルオタク女子のパワーを過小評価した運営委員に、喧騒に紛れて恨み言をぶつける。
そのわたしにも、暴言が投げつけられた。
「ちょっとアンタ、さっきから邪魔なのよっ!」
「でも。危ないのでもう少し下がってください。押さないでっ!」
明らかにわたしより年齢も体重も多そうなトッキーファンのひとりが、今にもロープを超えてきそうな勢いで突っかかってくる。それを、手を大きく広げて遮った。
「ロープに触れないでください!」
「上に登ったりなんてしないわよ。もう少し近くに行くくらいいいでしょう!どいてっ!!」
そんなことを言われても、ロープからステージの距離だって2メートルもない。これ以上近寄られたら、収拾がつかなくなってしまう。
押し問答を続けるわたしたちを煽るように、ソロパートが終わったトッキーが、引き際に見事なウインクと投げキッスをこちらに向けて飛ばしてみせた。
初めて生で体験するそれに衝撃を受けていたわたしを、興奮が絶頂に達した彼女が力任せに突き飛ばす。
「きゃー、トッキーー!!」
歩くのもやっとな状態で、本当にダンスなんてできるのだろうか?子どものお遊戯会を見守る母親のような気持ちになって、密かにエールを送る。
前奏が鳴り始めると、会場のファンの人たちも曲に合わせて手の振りを始めた。どうやらこれは、会場も彼らと一体になれるファンには定番曲のようだ。こうそくクンも必死でついていこうと頑張っている。視線を少しずらすと、完璧な振りの浅見さん親子が確認できた。
あ、手が左右逆だ。そこは前じゃなくて後ろ。初めて見た私でもわかるミスを連発するこうそくクン。
危なっかしくて見ていられないんだけど、なぜだか一生懸命な姿から目を逸らすことができない。
今度は一拍遅れ始めた。それを取り戻そうと慌てて動かしが足がもつれて、転びそうになる。それをどうにか堪えて持ち上げた、大きな星形の頭についたつぶらな瞳とわたしの目が、一瞬だけ合ったように思えた。着ぐるみの目となんて、そんなことあるはずないのに……。
間奏は、ソロで踊る部分があるらしい。順番にひとりずつ中央に躍り出て、個性を活かしたダンスを披露していく。その間こうそくクンはしばしの休みを使って、必死に息を整えていた。両肩が尋常でないくらい大きく上下を繰り返す。
トッキーの番になり、わたしの前の一団がヒートアップした。ロープはぐいぐいと押されて、今にもロープを通したポールが倒れそう。こんなのじゃあ、支えきれない!
なんでもっとしっかりした物を用意してくれなかったのか。アイドルオタク女子のパワーを過小評価した運営委員に、喧騒に紛れて恨み言をぶつける。
そのわたしにも、暴言が投げつけられた。
「ちょっとアンタ、さっきから邪魔なのよっ!」
「でも。危ないのでもう少し下がってください。押さないでっ!」
明らかにわたしより年齢も体重も多そうなトッキーファンのひとりが、今にもロープを超えてきそうな勢いで突っかかってくる。それを、手を大きく広げて遮った。
「ロープに触れないでください!」
「上に登ったりなんてしないわよ。もう少し近くに行くくらいいいでしょう!どいてっ!!」
そんなことを言われても、ロープからステージの距離だって2メートルもない。これ以上近寄られたら、収拾がつかなくなってしまう。
押し問答を続けるわたしたちを煽るように、ソロパートが終わったトッキーが、引き際に見事なウインクと投げキッスをこちらに向けて飛ばしてみせた。
初めて生で体験するそれに衝撃を受けていたわたしを、興奮が絶頂に達した彼女が力任せに突き飛ばす。
「きゃー、トッキーー!!」