デジタルな君にアナログな刻を
開店時間が迫る。とりあえずはクリスマスツリーだけでもディスプレイから外しておこうとした。だけどショーウィンドウから、もみの木の姿は消えている。
店内を見渡してもない。あれ、どこにいっちゃったんだろう。ふとカウンターの内側で下げた視界で、それをみつけた。
隅っこにぽつんと置かれたツリーは、クリスマスが終わった物悲しさをまとっていている。店長がここへ適当に片付けたのかな。

そのまま視線を上げれば、作業机の上に無造作に置き去りにされた宅配の伝票。宛先は、24日に電池交換でお預かりした時計のメーカーだった。受付の日付は26日になっている。お店が休みの昨日のうちに店長が発送したらしい。

そうだ!遠藤様の時計の件を聞いておくのを忘れていた。開店準備が終わったら、メールでもしてみよう。それくらいなら迷惑じゃないよね。

レジのお金を用意するために金庫を開けた。

すると、一緒にチャック付きのポリ袋に入れられた遠藤様の腕時計があり、『12/26 16:17 TEL済』少し乱れた文字の付箋が貼られている。針はしっかりと正しい時刻を指し、電池は新しいものになっていた。

どれもこれも、いったいいつの間に?
普段のいいかげんな様子からは信じられない仕事ぶりを不思議に思いつつ、10時ジャストにシャッターを上げる。

すっかり見慣れてしまっていたロータリーのツリーが撤収され、お隣の不動産屋の玄関先に立派な門松が置かれている以外は、いつも通りの駅前の朝だった。

開店前に時間がとれなくてできずにいたガラス拭きや床掃除を、来客や電話を気にしながら済ませる。

店長が下げたツリーを箱にしまう時、「また来年」と思ったけれど、果たしてわたしがまたこのツリーを飾る日が来るのだろうか。
今朝、店長にかかってきた電話。あれは『例のもの』の催促だったのではと推測していた。

もし本当に、この店が経営難に襲われいるのなら――。
イベントのバタバタでうやむやにしてしまっていた思いが、またぷかりと浮き上がってくる。でも、用意ができたのなら大丈夫なのかもしれない。淡い期待ととらえ所のない不安が交互に襲う。

いつもにもまし店を訪れる人も少なくて、暇を持て余していれば、余計にマイナスの思考に囚われる。持ってきた折り紙を使い、お正月らしい飾りを作ることにした。

小さな頃からこういう細かい手仕事は好きだし得意だ。特に折り紙は、折り目がぴっちり揃い綺麗に仕上がると気持ちがいい。
気がつけば夢中になっていた。

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