デジタルな君にアナログな刻を
正午近くになって、遠藤様が腕時計の受け取りに来店される。一緒についてきたお嬢さんの小さな掌に、両面折り紙で折ったニワトリを乗せてあげた。

くす玉を作るため、ひたすら同じものを折り続けるのに少し疲れたので、昼食を摂ることにした。店舗と事務室を繋ぐ扉を開けっ放しにしたまま、大急ぎでお弁当を食べる。一足先に休みに入った母が作ってくれた久しぶりのお弁当なのに、ゆっくり味わっている余裕がなかったのは少し残念だ。

たとえお客様が来なくても、店を空にすることはできない。午後も折り紙を折りながら、のどかすぎる時間を過ごしていた。

「こんにちは」

眠気覚ましにコーヒーでも飲もうとした、昼下がり。薗部時計店を訪れたのは、またしても売り上げに貢献してくださるお客様ではなかった。

「特に用事ってわけじゃないけど、ちょっと出かけてしまっていたからね。一応様子を伺いに。……大丈夫そうかな」

作りかけの折り紙を見て口角を上げ、立河さんは紙袋を差し出した。包装紙に包まれた菓子箱と、丸められた紙の筒はカレンダー?

「今日がウチの仕事納めでね。この辺の挨拶に回っていたんだけど、ここが最後」

「それは……わざわざすみませんでした」

店長は、年末で忙しい人に妙なことを頼んでしまったようだ。申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「もし少しお時間があるようでしたら、コーヒーはいかがですか?ちょうど淹れようと思っていたんです」

ウチで終わりならと、せめてものお返しにお茶に誘ってみる。立河さんはちらっと腕の時計を確認してから、にっこり微笑みを浮かべ「じゃあ遠慮なく」とソファに腰を下ろした。

彼は店長と一緒で、お砂糖もミルクも入れずにコーヒーを飲む。わたしはやっぱり大量に入れないとダメだ。

「薗部は仕事で?」

「さあ」と首を横に振る。店長は、立河さんにも神戸に行く理由を教えていなかったらしい。

年の瀬らしく、足早に人が行き交う表とは違う速さで時間が流れているような店内を見回し、彼は大きな手で顎を撫でる。あまりの暇さ加減に呆れたのかも。

「そういえば、ウチの若い連中から聞いたけど。彼、怪我したんだって?相変わらず要領が悪いな。何にでも一生懸命になりすぎる」

「ええっと、手の怪我はわたしのせいでして」

「だから一生懸命だったんじゃないかな」

「それは、どういう意味ですか」

立河さんはわたしの疑問に薄い笑いだけで応えた。少し冷めてしまったコーヒーを口に運んで喉を湿らす。

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