呪われ姫と強運の髭騎士
「……たまには庶民の風呂でも経験してみるかな」
 
 僕は自分の荷物から手拭いを出すと、部屋を出た。
 
 アニエスの脇を通り過ぎた際に彼女と視線が合う。
 
 気恥ずかしそうに、ほどいた髪を弄る彼女が幼く見えた。

 

 自分は自分で考えていたより単純なんだと思った。
 
 たったそれだけのことなのに、この修業の旅も悪くない、と思うなんて。

 
 一時のことかも知れないけど。いや――一時のことなんだろうな。

 

 やっぱり次の日も、同じように扱き下ろされるセヴランで

 

 その日も、アニエスの湯上がりの姿を見てそう思うという、学習能力のないセヴランであった。
< 283 / 283 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:27

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
棘々を纏った大柄なゆえに「物の怪」と呼ばれた荒々しくも美しい神様と その容姿ゆえに虐げられて生きてきた、うさぎと名付けられた乙女の物語。 ※ノベマでも投稿しましたが、改稿・エピソードを増量して、ベリーズにも投稿。 よろしくお願いいたします。 ※ノベマタイトル:『白うさぎと呼ばれる娘、物の怪と呼ばれる荒神の贄になったら幸せな花嫁になりました』 https://novema.jp/book/n1708150
悪役令嬢の初恋

総文字数/13,621

ファンタジー30ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
お節介すぎる性格が仇になって 「悪役令嬢」 という不名誉な異名で呼ばれるクロエ。 溜め息ばかりの舞踏会でもついつい…… 逃げるようにバルコニーにいる彼女に 別々に二人の人物が…… これはたった一人だけに愛されたいと願った 容姿に自信の持てない令嬢の話
本当の悪役令嬢は?

総文字数/10,185

ファンタジー14ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
 ぺルリアン国国王陛下によって「極刑」を言い渡されたアドリーヌ・オベール。  罪状は腹違いの「妹」の殺人未遂だ。 「私が妹を殺害しようとした証拠などない」  と、揺らぎない自信を表情に浮かべ国王に反論する。  だが、それを覆したのは自分の婚約者であるセドリック王太子だった。  断罪の中、奇しくもアドリーヌを庇ったのは――妹であるミリアンであった。  二人の姉妹――真の悪役令嬢はどっち?

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop