伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます


チェスターは仕事に戻り、ドロシアは自室へと向かった。屋敷の中には人が戻り始めている。見覚えのない使用人を見つけ微笑むと、彼らは姿勢を正し、深々と礼をして彼女を見送った。話をしてみたいとも思ったが、夜にきちんと紹介されてからのほうがいいのだろうとこの場は我慢した。

部屋の前には白猫がちょこんと座って待っている。


「みゃあん」

「アン! 来てくれたの」

「にゃー」

「あなたとお話したいと思っていたの。エフィーのところに行けば、あなたが何を言っているのか教えてもらえるのよね?」


手を伸ばすと、アンは一瞬ドロシアを見上げたが、今日は逃げなかった。


「抱き上げてもいい? 嫌ならしない」

「みゃー」


アンは逃げずに一声鳴いた。
これはきっと了解の意味だと受け取って、ドロシアはアンを抱き上げる。


「みゃぁ」


白くふわふわして温かい。それにアンからはハーブのようないい匂いがした。


「かわいい。柔らかくて温かいわ!」

「みゃー」


アンを抱いたまま、ドロシアは厨房を訪れる。
厨房も以前とは比べ物にならないくらいたくさんの人であふれかえっていた。


「小麦を持ってきてくださいー!」


指示を出すのも一苦労とばかりにエフィーが大声を張り上げている。
とても、アンと話したいから通訳してほしいとは言えない雰囲気だ。

< 100 / 206 >

この作品をシェア

pagetop