伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「忙しそうね。……仕方ないわ」
エフィーを交えるのは諦め、ドロシアはアンを連れて庭へと向かう。
「あのね、アン、私、オーガスト様に秘密を教えてもらったのよ」
「みゃ」
「凄く驚いたわ。でもね、一緒にいたいって伝えたら、わかってくれた。私と結婚してくださるって」
「みゃーお」
アンの表情は変わらない。でも、声が明るくなったような気がした。
アンはきっと喜んでくれているのだ。
「応援してくれてありがとう。アン」
「みゃーお」
アンの尻尾がフリフリと揺れる。
ドロシアはほんのり幸せな気分になった。
アンと本当に話せたら楽しいだろうけど、わざわざ通訳を挟まなくても、このくらい通じ合えるならいいのかもしれない。
*
その夜の夕食は大きな広間にようにされ、オーガストの隣の席についたドロシアは、屋敷に住む人々をひとりひとり紹介してもらった。
その中でも、チェスターの母であるクラリスは一際雰囲気のある美人だった。
長い金色の髪は背中まであり、こんな大きな子供がいるとは思えないほどハリのある肌に整った目鼻立ち。全体に神秘的な雰囲気があり、空の青を映したような碧眼に見つめられたら吸い込まれてしまいそうだ。
失礼ながらと年齢を聞けば、四十三歳だという。チェスターと並んでも姉弟にしか見えないほどの若々しさにドロシアは言葉も出せなかった。