伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
食事を終えた後は、湯あみだ。用意された夜着がいつもより薄手の透けて見えるものなことにドキドキしつつ、終わった後は、部屋で彼がくるのを待っていた。
窓からは満月に近い月が優しい光を降り注いでいる。湯あみから戻って来た時、ちょうどエフィーがやって来て、磁器製のティーカップにお茶を入れてくれた。
「ありがとう、エフィー」
「こちらこそ、いつもアンと遊んでくれてありがとうございます。いつも楽しかったと報告してくれていますよ」
「本当? 私もアンが大好きよ。いつも話を聞いてくれるの」
「この屋敷にいると、お寂しいでしょう。お友達を呼ぶこともできません。アンが奥様の気晴らしになれば嬉しいですわ」
「うん。……今もいてくれたらいいのにって思ってる」
指が震えて、カタカタと小さくカップを鳴らす。
「……どうされました?」
「緊張……かしら。私、母を亡くしているから、こんな時にどうすればいいのか全く分からないの」
母親が死んだとき、ドロシアは十七歳だ。まさにこれから、男女の睦言を学ぶような歳だった。その後社交界とは縁遠くなってしまったし、父やマギーに聞く勇気はなく、ドロシアには本で得たような知識しかない。
「とにかく、オーガスト様にお任せするしかないって、わかっているのだけど」
エフィーは小さく笑って、彼女の手を握りしめた。
「大丈夫ですよ。ああ見えてオーガスト様は長生きしておられますし。……まあ、女性関係は経験不足でしょうけど、気長なことには間違いありませんから、失敗したって問題ないです。ドロシア様はゆったり構えておられたらいいんですよ」