伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
さんざんな言われようだが、ドロシアも、オーガストも経験豊富というわけではないのだからあてにはならないとはひそかに思っていた。
「初心者同士のつもりで、失敗も楽しまれたらよろしいのでは?」
まるで経験者のようなどっしり構えた言いっぷりに笑ってしまう。
エフィーも歳はそれほど変わらないように見えるのだが、こういう言い方をするということは恋人がいるのだろうか。
「そうね」
「そろそろオーガスト様の湯あみが終わるころです。私は戻りますね」
エフィーが出て行ったあとも落ち着かず、室内を歩き回った。窓枠に手を掛け、とっぷりとくれた空を見上げる。
それからしばらくして、ノックの音が響き、ドロシアは体を再び緊張させた。
「ドロシア、入るよ?」
「は、はいっ」
湯上りすぐにやって来たのか、オーガストの薄い夜着の上から微かに湯気があがっている。
ところどころ肌に張り付いて透けて見えるのが艶めかしく、思わず見とれたドロシアは、オーガストが不思議そうな顔で見ているのに気付いて顔を赤くした。
「す、すみません。じっと見ちゃって」
「いや。それより今日は驚いただろう。疲れてはいないかい?」
「大丈夫です。私はもともと健康ですし」
でも言われてみれば体はだるかった。まあいろいろなことがあったし、と納得する。
オーガストの手が、ドロシアの手を握った。彼はほこほこと温かく、待っている間に自分の体がこんなに冷えていたのかと驚くくらいだ。