伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「……こっちにおいで」


連れられてベッドに腰かける。緊張で言葉少なになってしまったドロシアに、オーガストが笑いかけた。


「緊張するよね。改まってこんなの」

「はい」

「僕も緊張してる。ほら」


右手を、オーガストの夜着の胸のあたりに押し付けられた。たしかに、どきんどきんと激しい脈動がドロシアの手にも伝わってくる。


「……こんなとき、どうしたらいいんでしょう」

「こんなときって?」

「す、好きな人と、初めての夜を迎えるのに、私、どうしたらいいのか全く分からないの。あなたにあきれられてしまうかもしれないわ」

「それは僕のセリフだな。君に嫌われないかどうか、心配で落ち着かないくらいなんだけど」


そこで、ついばむようなキスが落ちてくる。


「だけど、そんな余裕も今無くなってきた」

「え?」


腕を掴まれ、どさりとベッドに倒される。柔らかいクッションを背中に感じながら、彼の唇が、何度も重なりどんどん深くなっていくのを、ドロシアは徐々に息を荒くしながらも受け止めた。


「かわいい、ドロシア。かわいすぎてこっちがおかしくなりそうだよ」


枕もとのランプが消される。部屋を照らすのは窓から差し込む月明かりだけで、しかしそれがオーガストの表情に影をつくり、いっそ色気を醸し出していた。
< 105 / 206 >

この作品をシェア

pagetop