伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「それはそれで僕にはちょっとした拷問だけどね。わかってる? 次に人間に戻ったときに、我慢出来る自信はない」


そう言われて、思わず顔を赤くしたドロシアは、小さく頷いた。


「その時は、……その時です」


恥ずかしくて顔を上げていられなくなったドロシアは、ベッドのシーツを握りしめる。
オーガストは、先ほど脱がせた彼女の夜着を咥えて持ち上げた。


「とりあえず着ないと風邪をひくよ」


恥ずかしさに顔を赤らめながら、ドロシアは滑らかな肌触りの夜着を着込む。
横になって、隣で丸くなる猫のオーガストを抱きしめた。

ほのかな温かさに穏やかな安堵を感じ、うとうとし始めた頃、オーガストの声が耳に響いた。


「ドロシア、眠ってしまったかい?」

「……いいえ?」

「猫のときにばかり言うのはなんなんだけれどね」


なんとなくもごもごと口ごもり、尻尾を落ち着かなさげに揺らす。
オーガストの様子に不審なものを感じでドロシアは目をあけた。
暗闇の中だからか、とび色の瞳が大きく開かれて月の光を反射しながらもドロシアを映していた。


「いい夫婦になろう」

「え」

「君は猫の僕も受け入れてくれた。僕は……生まれ変わって初めて、生きててよかったと思っている。この気持ちを、僕は君にも返したいんだ。努力するよ。君にとっていい夫になる」

「……まあ」


初めて会ったときに、どうして言ってくださらないのと彼をなじったときの言葉だ。
覚えていてくれたのか、と思うと同時に、改めてその言葉を誓ってくれるオーガストが心の底から愛おしかった。
< 108 / 206 >

この作品をシェア

pagetop