伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます


 ドロシアが父への返事をデイモンに託してからさらに一ヵ月後、ドロシアはオーガストとともに四頭立ての箱馬車に揺られていた。

中にいるのは、オーガスト、ドロシア、デイモンの三人だ。

オーガストは黒の礼服にシルクハット、ドロシアは若木を思わせる薄緑のドレスで、ロング丈のスカートの裾には、更に濃い緑で豪華な刺繍が施されている。デイモンは落ち着いた茶色のスーツだ。


首都では国王様の誕生を祝う祭りが一週間にわたり行われる。ありとあらゆる貴族が、この期間中に王宮を訪問し、祝辞を述べて王家への忠誠を誓うのだ。

ドロシアの父のメルヴィル男爵は、引きこもりだしてからは出席しない年が続いていたが、今年は再起をはかり出席するという。
オーガストも、伯爵としての体面もあり、この行事だけは例年出席しているらしい。

今回は、男爵と面会するため、手紙で日時を調整した。国王への挨拶を済ませた後すぐに男爵と落ち合い、一時間ほど話してから帰る予定だ。滞在時間は二時間に満たない。猫化を恐れての強行スケジュールだ。


「まあ今までも国王様への謁見の後はすぐに帰っていたので、あまり問題はなかったんですよ。一度だけ、途中で猫化してしまった年がありましたけどね」

「ああ、知ってます」


クスクス、とドロシアが笑うと、呼応するようにオーガストも微笑んだ。
デイモンだけが不思議そうな顔をしたが、夫婦の秘密の目配せに口を挟むつもりはないらしく、気を取り直したように息を吸ってつづけた。

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