伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「今回はメルヴィル男爵との面会も予定しています。一男爵と話しているのを見れば我も、という貴族も出てくるでしょう。滞在が長期にわたれば、なにかと問題が起こりやすくなります。いざというときの対応を打ち合わせておきましょう」
大型の馬車の向かいに座るデイモンがオーガストとドロシアを交互に見て、重々しい声で念を押す。
「オーガスト様は猫化が始まったらすぐ人目のつかないところに隠れること。奥様が隣にいる場合にそうなったら奥様は一緒にいる方の気を引いて下さい。オーガスト様は出来るだけ私か奥様の傍から離れないように」
「分かってる」
「とにかく猫化しないことが一番なのです。できるだけ疲れないよう、人の少ない場所を移動しましょう。仕事の話を持ち掛けてこられたときは私が相手をします。旦那様はイエスかノーで答える程度で。社交的な面では今回は奥様がいるのでお任せします」
「が、頑張るわ」
ドロシアとて、もともと社交的ではないし、屋敷は来客など来ないのだから対人スキルは一向に上がっていない。
不安しかないが、そこはオーガストのため、と割り切って頑張るしかない。
「もし猫化してしまった場合で、逃げられないようなときは、奥方のドレスの中にお隠れ下さい。服も含めて、とりあえず隠してもらえれば、後は私がタイミングを見て回収します。そういう意味では女性の出席者が同行すると楽なものですな」
「ああ。だから裾丈が長いものを、と言ったのね?」