伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「オーガスト様は私をとても大切にしてくださっているわ。お父様もお礼を言ってください」
「いや、ドロシア。君に助けられているのは僕のほうだから」
苦笑するオーガストに、重ねるように男爵がいう。
「いえ。あなたが娘を大切にしてくれているのは本当のようだ。私は先ほど、すごく驚いたのですよ。何せこの娘はしっかり者でしてね。母親が亡くなってから泣きくれる私を叱咤し、汚れるのもかまわず、家の中を切り盛りしてくれていた。その娘が、さっきは私に甘えてきたのです。……普段甘えさせてもらってなければ、あんな態度は咄嗟に出ないでしょう。少なくとも、私といた時はそんなことなかった。本当に小さいとき以外はね」
「……お父様」
あの頼りない父が、そんなことに気付くなんて思わず、ドロシアは感激した。目尻にじわりと涙が浮かんでくる。
「思い出したよ。お前は本当はすごく泣き虫だったし、甘えんぼうで感情豊かな子供だった。あの頃のドロシアが見えたような気がしたんだ。……ノーベリー伯爵。あなたになら娘を安心して預けられます。ありがとう。本当にありがとう」
「……いや。照れてしまうな。そんなことを言われては。義父上、顔を上げてください」
「そうですよ。僭越ながらドロシア様がわが主人を救ってくださる部分は過大にあります。こちらからもお礼を言わねばならないところです」
「こら、デイモン」
デイモンの口出しにより、場は和んだ。
と、その時、後ろからオーガストに声をかけるものがいた。