伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「これはこれは、ノーベリー伯爵。以前は本当に失礼しました」
ボタンが引きちぎれそうなほどピチピチの礼服を着込んだ小太りの男性は、マクドネル子爵だ。
今日も奥方ではなく、美しい娘を連れている。
「これは、……マクドネル子爵」
「ここで会えるとはなんという幸運でしょう。これは運命かもしれませんな。こっちは、うちの三女でビアンカです。以前もちょっとお会いしたんですが、覚えておられますかな?」
オーガストは少し眉根を寄せた。マクドネル子爵は、彼に口を挟む隙間を与えない位に、息継ぎもそこそこに話を続ける。
「私が支援していこうと思ってる事業は、このような細工物を作る職人を養成し、工場を作り大量に生産し売り出していくものなのです。ほら、これはまだ売り物ではありませんが、立派なものでしょう?」
マクドネル子爵は、隣にいる娘を前に押し出す。若々しいビアンカの首には、真珠と深緑の宝石が幾重にも編み込まれたネックレスがつけられていた。
たしかに豪華で気品がある。美しい彼女にはとてもよく似合っていた。
そして、オーガストの隣にいるドロシアに、無理やり作ったような笑顔を向ける。
「こちらのお嬢様にもきっとお似合いですよ。どうですかな。ぜひこの事業にご支援をいただけませんか?」
先ほどまで存在さえないように扱っていたドロシアを急に引き合いに出されて、オーガストは顔をゆがめる。