伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「その宝石は確かに素晴らしい。しかし、宝飾品というのは希少だからこそ価値があがるものだし、職人を一か所に集めるのは彼らの個性をつぶすことになる気がするんだが、どうかな。なにせ、今日は仕事の話はなしにしたい。こうして妻を連れ出すのは初めてなものだからね」


ドロシアの肩を抱いたオーガストに、マクドネル子爵は眉を寄せる。


「妻? ご結婚なされていたとは初耳です。しかも、こちらが奥方でしたとは。今日はうちの娘を紹介しようと思っていたのに、これはタイミングが悪かった。伯爵さまはあまり浮いた噂のひとつもないので、のんびり構えすぎましたな。で、こちらはどちらから輿入れされたお方ですか?」


マクドネル子爵は、まじまじとドロシアを見つめる。


「こちらのメルヴィル男爵家のご令嬢だ。名前はドロシア。気立てもいい最高の妻だよ」

「へぇ。……これはメルヴィル男爵。最近、羽振りが良くなってきたのは、もしや伯爵の支援のおかげですかな」


挑戦的なマクドネル子爵に、もともとそれほど豪胆ではない男爵が怯む。オーガストのほうがムッとしたように反論した。


「支援と言うほどのことはしていない。メルヴィル男爵家が栄えるのはひとえに男爵の努力の賜物だよ」

「……ずいぶん仲良くおなりですなぁ。なるほど娘を使って取り入るとはなかなか男爵も侮れない」


マクドネル子爵の態度に、明らかにオーガストが苛立っている。
メルヴィル男爵のほうは、当たらずとも遠からずと思っているのか、困ったように笑うだけだ。
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