伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
ドロシアがなんとか場を和ませようとオーガストの腕に手をかけたとき、マクドネル子爵の傍らの娘が口を挟んだ。
「ドロシア様……とお呼びしてもよろしいですか? 私、ビアンカ=マクドネルです。せっかくお会いできたのだもの、少しあちらでお話いたしません?」
ビアンカは窓の外を指さした。城の庭園は、秋咲きの薔薇が満開を迎えていた。
「あ、……でも」
心配のあまり振り返ったドロシアに、オーガストが優しく笑いかけた。
「行っておいで、ドロシア。話が終わったら迎えに行くから」
「でも……」
「僕は大丈夫。デイモンもいるから」
ちらり、とデイモンに視線を送れば、無表情のままで頷かれる。
これまでもデイモンと二人で乗り切ってきたのだろうし、とドロシアはその場を任せることにした。
ビアンカは楽しそうにドロシアの腕を取ると、「さあ、参りましょう」と笑顔を見せる。
美しく社交的な令嬢だ。首元を彩る宝石も、彼女の美しさを引き立て、大人っぽく見せている。
マクドネル子爵の奥方はきっと素晴らしく美人なのだろう。太っちょで細目な彼と血縁関係があろうとはとても思えない。
歩きながら、ビアンカの艶のある唇からは、次々の話題が出される。しかし、ドロシアには興味のない話ばかりだ。どこそこの男爵には絶えず女性の噂があるとか、最新の流行が生み出される有名な仕立て屋の話とか。
どの話題にもあまり好反応が示されないことに焦れてきたのか、ビアンカははあ、と一度ため息をつくと、挑戦的なまなざしで切り出した。