伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「ドロシア様はいつノーベリー伯爵と結婚されたのですか?」
「えっと半年ほど前ですわ」
「私がノーベリー伯爵と初めてお会いしたころと同じですわね」
「……一度、屋敷に来られましたわね。あの時は主人が失礼をいたしました」
「まあ、あの時にはもうおられたの?」
「はい」
「そう。……道理で屋敷に入れさせたがらないわけだわ。もうあなたに決めていたってことなのね」
追い返したことには別の理由があるのだが、それはいうわけにはいかない。
ドロシアは「あの時は、正式な婚姻を結ぶ前だったので、私に気を使ってくださったのかもしれません」と濁した。
庭に出てきたふたりは、紫色の大人っぽい薔薇の前で立ち止まった。ビアンカはその薔薇を一本摘みながら、挑戦的に笑う。
「美しいものにはトゲがありますわよね。ノーベリー伯爵も見目麗しいお方だけど、得体が知れなくて、恐ろしくはありませんか?」
「……いいえ? そんなことは」
ビアンカが何を言いたいのかわからず、ドロシアは戸惑った。
「ドロシア様はおいくつ? 私は十七です」
十七と言えば、まさに結婚相手を見つけるために社交に忙しいころだろう。
「私は二十二です」
「あら。意外にお年を召してますのね。なんだ、そんな年齢の方でも良かったということですわね。……ねえ、ドロシア様、あなた、政略結婚で嫁がされたのでしょう? あなたがいなければ私がそうなるはずでした。だから私たち、お仲間のようなものだわ。そうでしょう?」