伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
ドロシアは言葉に詰まる。
どうやら、ビアンカはマクドネル子爵が邪推した通りに、誤解しているようだ。
「私ね、最初に伯爵邸に行ったときに怒鳴られて、ノーベリ伯爵がすっかり怖くなってしまったの。お年も三十七歳とかなり上ですし、元々乗り気な縁談ではなかった。だから、あなたという人がいてくれてとても助かったわ。お父様ったら何とかして伯爵からの支援を得ようと躍起になっているんだもの。私を使って伯爵を取り込もうとさえしているのよ?」
「まあ、……そんな、あけすけな」
「あなただって私がその気になったら困るでしょう? 私があなたに手の内を明らかにするのは、仲間になってほしいからよ。あなたから進言してほしいの。融資の話を。その話が決まれば、お父様は満足なんだもの。ね、お願い」
「私から……? それは無理だわ」
「どうして? あなただってメルヴィル男爵から同じように伯爵へ差し出された供物でしょう? だったら私の気持ち、わかってくれるでしょう? このままじゃあんな恐ろしい人の愛人にさせられてしまうわ」
「オーガスト様は恐ろしくなどないし、愛人なんて持たないわよ」
「嘘。あんな冷たい瞳で睨まれたのは生まれて初めてです。あなたには同情するわ。家のためとはいえ。……ああでも、あなたには得だったのかしら? その髪では……求婚相手も現れないでしょうしね」
「え?」
「お年も二十二歳とおっしゃったものね。あなたにとっては嫁ぎ先が決まって幸運だったってことね。たとえ相手が恐ろしい方でも、お金持ちですしね」
ゆったりと笑われて、ドロシアは自分が馬鹿にされていることに気づいた。ムッとしたままビアンカをにらみつける。