伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「……今日はどのドレスを着ようかしら」
選んだのは緑色のドレスだが、婚礼衣装に似た純白のドレスにどうにも目が惹かれる。
「これ、ここに来た日のドレスよね?」
チクリ、と頭が痛んで、ドロシアはよろめいた。頭痛なんてしたことなかったのに、と不思議に思う。
(それに、貧血で倒れるなんて。私、健康だけが取り柄なのに)
どことなく違和感を覚えながらも着替えを済ませると、扉がノックされた。
「ドロシア様、朝食の用意が出来ました」
どうぞ、と言えば、エフィーが白猫のアンとともに入ってくる。
「すみません、アンが足元から離れなくて」
「いいのよ。おいで、アン」
「みゃー」
しかし、アンはエフィーの足元から動かなかった。むしろ警戒するように身をすくませている。
ドロシアは腑に落ちずに伸ばした手を下げる。
「私、アンには懐かれてなかったんだっけ。そうね。そうだったわね」
「……奥様。こちらに並べておきますね」
エフィーは困った様子で、言葉少なに料理を並べると、そそくさと部屋を出ていく。
ドロシアは湯気の上がった美味しそうな料理を前にため息をついた。
「私、いつも一人で食べていたんだったかしら」
前はいつも誰かがいた気がするのだけど、それは実家にいた時の記憶だっただろうか。
頭の中がどうにもぼんやりしていて、焦点が定まらない感じだ。