伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

違和感。
先ほどからの居心地の悪さはこれが原因のように思う。
しかし、何がおかしいのかが分からないから、ドロシアにはどうしようもないのだが。

考えても仕方ないか、と首を振ってドロシアは階段を下りた。玄関前で待っていると、使用人たちはにこやかに声をかけてくる。


「おや、ドロシア様、どうなさいました?」

「チェスターを待っているの。散歩でもしようと思って」

「それはいい」


笑ったのは、チェスターの父親のデイモンだ。彼は旦那様の仕事の手伝いをしていて、屋敷にはいないことのほうが多いのだが、ここのところは急ぎの仕事もないらしく、屋敷の雑事を行っている。


「今は私も屋敷にいるのですから、もっとチェスターとゆっくりしてもらって構いませんよ」

「そう? でも……」


チクン、とまた頭が痛む。ずっとではなく、時折刺されたように痛くなるのが不快だ。
途端に、デイモンのにこやかな表情にまた違和感が生まれる。


(自分の息子が愛人って立場になっているのに、どうしてこの人は笑うんだろう)


小さな疑問が芽吹いたが、花をつける前にチェスターがやってきて、ドロシアの意識はそちらに持っていかれる。


「お待たせしました。ドロシア様」

「チェスター」


チェスターのエスコートに手をのせる。そこで、ドロシアは左手に輝いている指輪が気になった。
蔦を模した模様がリング一面に彫られた金色のリングだ。毎日つけっぱなしにしていたから気にもならなかったが、これは確か夫にもらったものだったような気がする。
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