伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「例えばこの効き目のいい薬。効果に見合った値段をつけて流通させればいいのよ」

「しかし、魔女の力を金儲けの道具にするのは……」

「もちろん、困っている人にも同じように売れなんて言っていないわ。金儲けをしなさいと言っているわけじゃないの。でもね、人って与えられてばかりでもダメなのよ。『何の利もないのに、どうしてこんなに親切なのか』、『騙されているんじゃないか』と。悲しいことだけど、人間にはそういうところがある。親切心に対してどんどん不信が募っていくの。だけど、ほんの少しでも対価を払えば、それは自分の力で得たものになる。ビジネス化することによって、魔法という便利な力が、人間の手にも届くようになる。それが魔法を受け入れてもらえる第一歩になるって……そう思わない?」


息をつめてドロシアの言葉に聞き入っていたデイモンは、目を細めて顔を歪ませた。まるで、今にも泣き出してしまいそうだと思い、ドロシアは続けた。


「もちろん、悪用しようという人も出てくるわ。そんな人たちから魔女を守るために、あなたがいればいいんじゃないかしら。……あ、もちろん、今まで秘密を守るために生きてきたあなたにとって、簡単じゃないことも分かってる。だから、これは一意見よ。選ぶのはあなただわ」

「……あなたは本当に不思議な方ですな」


デイモンはクラリスの方に視線を移してポツリとそう言った。ドロシアもつられるように魔女たちのほうを見る、……と、そちらはそちらで、変化が起こっていた。


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