伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「どうですか、オーガスト様」

「うん。……っつ、うっ」


クラリスの問いかけに、オーガストが体をゆがめて苦しみながらも答えている。


「四度も生まれ変わってますからね、かなり濃密なつながりになっているんですよ。……でも、必ず分離はできます。あなたが、自分自身で決別しようと思えば」

「分かってる」


猫の体全身を浅く揺らしながら、苦しそうに呼吸をしている。


「……オーガスト様」


ドロシアは息をつめて彼を見つめた。猫の耳がそのささやきを拾って小さく揺れる。
苦しそうに顔をゆがめたまま、とび色の瞳はまっすぐにドロシアを捕らえた。ドロシアは神に祈るように手を合わせ、溢れんばかりの愛情をこめて囁く。


「頑張って。……信じてます。私たち、ずっと一緒にいられます。あなたと……」

健やかなるときも、病めるときも、ずっと共に歩いていきます。

いい夫婦になりましょう? 
共に歩き、支え合い、苦難も幸福も分かち合っていきましょう。
あなたとなら、それができる気がするんです。


ドロシアの声は、隣で座るデイモンにも聞こえないようなほんの小さなものだったが、猫の優れた聴覚はそれをきちんととらえた。

オーガストは自分を押さえ込んでいた皮膜のようなものに、ヒビが入るような音を聞いた。


「僕はもう、……大丈夫なんだ。だって君を、信じられる。僕は……」

信じて愛し合える人に、出会えたんだ。


一粒の涙がとび色の瞳から零れ落ちる。と同時に、オーガストの全身を貫くような痛みが走った。


「ぐ、うわああぁぁっ」


猫の尻尾をピンと立て、オーガストは悲鳴に似た声をあげた。

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