伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
天井のシャンデリアが、揺れた。屋敷内を小さな揺れが襲い、クラリスが驚いたように目を見開いて辺りを見回した。
変化は、ドロシアにも感じられた。屋敷全体にかかっていた重苦しい魔法の気配。そのすべてが溶けるように消えていく。
そして、クラリスの先にいるオーガストにも変化は現れた。
とび色の瞳が輝いたと思ったと同時に、種が芽を出すように、毛むくじゃらの体が伸びやかな人間の体へと変化していく。陶器のように白くつややかな肌に、美しい隆起を作り出す筋肉。宝石のようなとび色の瞳からは、神々しささえ感じさせた。
見惚れていたドロシアは、はっとなって慌ててベッドに向かい、シーツを掴んで彼に被せる。
「ほかの人にそんな姿見せないでください!」
頭から被せられたシーツを体に巻きなおしながら、オーガストは思わず笑ってしまう。
「ドロシア、最初に言うことがそれ?」
「す、すみません。だってっ……あまりにも綺麗なんだもの」
オーガストは真っ赤になって恥じらうドロシアの腕を引っ張り、シーツ越しに抱きしめる。
「本当に人間に戻れた。ドロシア、こうして君を抱きしめられる。……それに、屋敷にかかっていた母の魔法の気配が消えてる」
「え?」
たしかに、ドロシアにも屋敷の空気が変わったのが感じられた。
階下からもざわめきの声が聞こえてくる。みんな、何かしらの変化を感じているのだ。
「お母様の魔法まで、……解けたんですか?」
「ああ。どうやらそのようだ」
まだ信じきれないように天井を見つめるオーガストを、ドロシアはじっと見つめた。
ほんの少しの違和感。
それは彼の顔に一番表れている。
以前あった目尻のしわがなく、肌艶がいい。
前から年齢の割には若い見た目だと思っていたが、これはもう根本から違うような……。