伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
*
ドロシアがアールを連れて執務室に入った時、部屋には四人の姿があった。中央のソファに着替えを済ませたオーガストとクラリスが向かい合って座り、デイモンとチェスターはクラリスの後ろに立っている。
「エフィーは?」
「遠慮します、とのことです。まずは我々で話し合ってほしいと」
「そう」
「おいで、ドロシア」
オーガストに呼ばれて、ドロシアは隣に腰かける。シャツに包まれていても分かる、大きな肩幅とがっしりとした腕。眉はすっとなだらかな山をつくり、対応するように口もとは逆向きの弧を描く。穏やかな笑顔は彼の気質そのものを的確に表現している。
人間に戻ったオーガストを久し振りに見るからなのか、それとも若返ったからなのか、やたらにキラキラして見えてドロシアは落ちつかずに顔を押さえた。
そんな様子を眺めつつ、口火を切ったのはクラリスだ。
「ではお話しますわね。まず最初に、この屋敷に亡くなったオーガスト様のお母さま……今は奥様とお呼びしますわね。奥様の魔法がかかっていたことは皆さんご存知でしたよね?」
「ああ。しかし、あれがどういった内容の魔法なのかは全く分からなかっただろう」
オーガストが続け、クラリスが小さく頷く。
「私も疑問でした。オーガスト様を守る魔法なんだと言い伝えられてはきましたが。……そもそも魔法とは、かけた本人が死んでしまえば解けるものです。なのに、あの魔法は解けなかった。何か大きな仕掛けがあるんだろうと思っていました。そして、魔法が解けたことでようやく理解できました。あの魔法は、オーガスト様、あなたの心を解放の鍵としてかけられた魔法だったんです」
ドロシアがアールを連れて執務室に入った時、部屋には四人の姿があった。中央のソファに着替えを済ませたオーガストとクラリスが向かい合って座り、デイモンとチェスターはクラリスの後ろに立っている。
「エフィーは?」
「遠慮します、とのことです。まずは我々で話し合ってほしいと」
「そう」
「おいで、ドロシア」
オーガストに呼ばれて、ドロシアは隣に腰かける。シャツに包まれていても分かる、大きな肩幅とがっしりとした腕。眉はすっとなだらかな山をつくり、対応するように口もとは逆向きの弧を描く。穏やかな笑顔は彼の気質そのものを的確に表現している。
人間に戻ったオーガストを久し振りに見るからなのか、それとも若返ったからなのか、やたらにキラキラして見えてドロシアは落ちつかずに顔を押さえた。
そんな様子を眺めつつ、口火を切ったのはクラリスだ。
「ではお話しますわね。まず最初に、この屋敷に亡くなったオーガスト様のお母さま……今は奥様とお呼びしますわね。奥様の魔法がかかっていたことは皆さんご存知でしたよね?」
「ああ。しかし、あれがどういった内容の魔法なのかは全く分からなかっただろう」
オーガストが続け、クラリスが小さく頷く。
「私も疑問でした。オーガスト様を守る魔法なんだと言い伝えられてはきましたが。……そもそも魔法とは、かけた本人が死んでしまえば解けるものです。なのに、あの魔法は解けなかった。何か大きな仕掛けがあるんだろうと思っていました。そして、魔法が解けたことでようやく理解できました。あの魔法は、オーガスト様、あなたの心を解放の鍵としてかけられた魔法だったんです」