伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「チェスター、お前はもう十八だ。自分の人生を自分で決める年だろう。好きにするといい」
投げかけられて、チェスターはたじろぎつつも答える。
「……僕は、オーガスト様やドロシア様が好きですし、これからもお傍でお役に立てたらと思っています。それにここには、エフィーもいるし」
「じゃあお前には今の私の仕事を引き継ごう。……クラリス」
「はい」
クラリスの人形のような顔が歪む。いまだ二十代と言われても違和感のないほど、美しい現在最高の魔女は、人の世に戻るには異彩を放ちすぎている。
「俺は、君たち魔女が作る薬を売る商売を始めてみようかと思っている。ただし、魔女の力のことは隠し通すつもりだ。俺はまだ、そこまで人間を信用してはいない」
「薬を……?」
「そう。自分たちで、自分の暮らしを支える金を稼ぐんだ。今まで俺たちは、オーガスト様に守られて当然だと思い込んでいた。だが、隠れ住むには限界があるんだ。実際に、魔女の数は減少している。閉じこもっていれば当然出会いはない。このままでは老いて滅びを待つことになってしまう。それじゃダメなんだ。自分たちを活かし生き延びていくには、やはり自分たちの力で生きていかなきゃいけないんだ。だから」
「だから?」
「一緒に来てくれ。君の見た目が人に違和感を与えることは承知している。それでも俺の妻は君だけだ。なにがあっても守るから、俺についてきてほしい」
「……私を、連れて行こうって言うの?」
「そうだ。俺は今度こそ君を、外の世界に連れ出す」