伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます


 それからひと月後、ノーベリー邸には、騒がしい来客が訪れていた。


「これは、……伯爵、ずいぶん痩せられたのでは? なんかこう以前より、若々しくなって……」


おどおどと上目遣いでオーガストを見上げているのは小太りのマクドネル子爵だ。
一緒に付き従ってきたビアンカは、怪訝そうな表情でドロシアを伺っている。

前回の帰り際とは打って変わった態度に、ドロシアは、この屋敷の魔法が解けたと同時に、ビアンカへの暗示が解けてしまったのだろうと推測した。


「そうかい? 最近調子が良くてね。妻がいるというのはいいもんだね。気持ちも若返る」

「はあ、いや、……ああ、そうですな」


マクドネル子爵はぎこちなくドロシアを見ては、機嫌をとるように歯を見えるほどの笑顔を作った。
今まで子爵はドロシアに対してはことごとく礼を欠いてきた。それがどうだろう、今のこのへつらった態度は。

(きっと、ビアンカが私が魔女かもしれないと言ったのね。それで、……彼らは国王に訴える前に、ここに様子を伺いに来たということかしら)


ドロシアは相手の出方を見るつもりで微笑み返した。子爵は、体をびくつかせ、背筋を伸ばし、何気なさを装って目をそらす。


(……完全に、怯えているわね)


もうオーガストは猫にはならないし、力の強い魔女はデイモンの屋敷へと移っている。
弱みの無くなったドロシアには悪戯心が湧いてきた。

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