伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます

「ええ。私の特製料理でオーガスト様はすっかり元気なんですのよ。子爵も召し上がります?」

「い、い、いやあ。その。わしは今ダイエット中でしてな。……それより! 今日お伺いしたのはですな。前に投資していただいた事業の話なんです。こう言ってはなんですがね、全く職人が集まらない。ノーベリー伯爵のお墨付きだというのに、おかしいとは思いませんか?」

「僕のお墨付きだったらなんでもうまく行くというわけではありませんよ? それにあの事業には少し無理もあります。職人を集めて決まったデザインを大量生産させようとしているようですが、芸術家の作品に対して口出しするのは彼らの個性をつぶすことになりかねない。子爵はせっかく輝石の入手経路などを持っておられるのですから、工場(こうば)を安価で貸し出し、若い職人を育てることに力を注いだほうが、後の利益を生むと思いますが」

「む、……だが、しかし」

「そうでなければ、僕も手を引かせていただきます」

「いや、お待ち下され伯爵!」


子爵とオーガストが話している間、ビアンカは落ち着き無さげにドロシアを盗み見る。ドロシアは苦笑して彼女を散歩に誘った。


「えっ……」

「ですから、お庭を散歩しませんか? お仕事の話は私たちには難しくて。疲れてしまいますわ」

「そ、そうですわね」

「それに、ビアンカ様の近況も聞かせていただきたいわ」


微笑むドロシアに対して、ビアンカはぎこちなく笑ったまま立ち上がる。
庭に出れば、黄色や赤に色づいた花がふたりを迎えてくれた。

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