伯爵夫妻の甘い秘めごと 政略結婚ですが、猫かわいがりされてます
「ビアンカさまは、……以前お話してくれた彼とはどうなったの?」
「えっ?」
「忘れてしまいました? 恋人がいて、縁談を持ち掛けられたせいでお別れしたけれど、もう一度頑張ってみるっておっしゃっていたじゃない」
「そ、そうだったかしら」
暗示の解けたビアンカが今どういう記憶を保持しているのかは分からないが、混乱していることは間違いなさそうだ。
ドロシアは一気に畳みかける。
「色々お話してくださったじゃない。うまくいったら教えてくださるって。私、いい報告が聞けるのをずっと待っていたんですのよ」
「そういえば、そんなことも……。こちらのお屋敷にお邪魔したときに……?」
「ええ。私たちすっかり仲良くなったのに。忘れてしまいましたか?」
悲しそうな顔をしてみせると、ビアンカはぎょっとして慌て始めた。
「や、待って違うわ。私、……私、あなたが、伯爵様を消したのを見た気がするの。それにあの若返りだって、あなたがしたんじゃないの?」
「消した? いやだ。夫はちゃんとあそこにいるじゃない。それに、食生活を変えたらすっかり元気になっただけよ。ほら、昔は外に出るのを嫌がっていたでしょう。一緒に外を散歩するようになっただけで見違えるように元気になったのよ?」
「そ、そう……なの?」
「みゃー」
そこへ白猫のアンが通りかかる。
「あらアン」
「みゃーお」
アンは尻尾をドロシアのほうに向け、ちらりとビアンカを見つめる。